港区のラウンジや丸の内のオフィス街で、サブマリーナーやデイトナを見かけるのには、もう飽き飽きしていませんか?
もちろん、それらは素晴らしい実用時計です。しかし、ある程度の年収を達成し、社会的地位も確立したあなたが、わざわざ「量産された成功の証」を身に着ける必要がどこにあるのでしょう?
もしあなたが、他人の評価軸ではなく、自分自身の審美眼でモノを選びたいと渇望しているなら、たどり着くべきはPiaget(ピアジェ)です。
極限まで薄さを追求する変態的(褒め言葉です)なエンジニアリング。時計メーカーでありながら、ハイジュエラーとしての側面も持つ二面性。
この記事では、ハリウッドスターから日本の玄人まで、この「美しき狂気」に魅入られた男たちを紹介します。彼らが選んだモデルのリファレンス、ムーブメントの機構、そしてその背景にある文脈を、いち時計マニアの偏愛を込めて解説します。
なぜ真のエリートはデカ厚時計を捨てるのか?

時計業界には薄型(Ultra-Thin)という、極めてニッチで、しかし最も高貴なジャンルが存在します。成功者がピアジェを選ぶ最大の理由は、この袖口の美学にあります。
アルティプラノの衝撃
あなたが普段着ているオーダーメイドのシャツやスーツ。その袖口(カフ)と手首の隙間は、計算され尽くした数ミリの世界です。
ここに、厚さ12mm〜15mmもあるダイバーズウォッチをねじ込むのは、あえて厳しい言い方をすれば「無粋」です。
もちろん、あえての無粋を楽しむ余裕も時には必要です。しかし、ピアジェのアイコンであるアルティプラノを見てください。
伝説的な自動巻きムーブメント「Cal.1200P」を搭載したモデルは、ケース厚わずか5.25mm。これは、500円玉2枚分とほぼ変わりません。
「薄い=弱い」ではありません。限られたスペースに数百のパーツを収め、実用的な強度と精度を出すには通常の何倍もの技術力が必要です。
セレブリティたちがレッドカーペットでピアジェを選ぶのは、単に高級だからではありません。「私は、自分のスタイル(シルエット)を崩してまで、時計を主張させない」という究極のダンディズムの表れなのです。
マニュファクチュールでありジュエラーでもある
多くの時計ブランドは、「時計作り」か「宝飾」のどちらかからスタートしています。しかしピアジェは、その両方を最高レベルで自社一貫生産(完全マニュファクチュール)できる世界でも稀有なブランドです。
彼らは、ムーブメントの地板(ベースプレート)自体を文字盤にしてしまうような発想やケースに直接宝石を埋め込む技術を持っています。
時計マニアが唸るのは、この技術的な裏付けのある美しさです。ただ金を貼っただけの時計とは格が違います。
この背景を知っていることこそがあなたの知性なのです。
ハリウッドの異端児たちが愛するピアジェ・ポロの解釈
1979年に誕生した初代「ポロ」は、ケースとブレスレットが一体化したゴールドの塊でした。アンディ・ウォーホルが愛したことでも知られるこの系譜は、現代においてラグジュアリースポーツ(ラグスポ)として再解釈されています。
ライアン・レイノルズが選ぶポロ デイトの”引き算”
『デッドプール』でも人気のライアン・レイノルズ。彼が愛用するのは、ステンレススティール製の「ピアジェ ポロ デイト(Ref. G0A41002)」です。
ここで注目すべきは、彼が「クロノグラフ」ではなく、シンプルな「3針デイト」を選んでいる点です。デッドプールのプロモーションイベントやその他のレッドカーペットで、このモデルを含む様々なピアジェの時計を着用しています。
多くのブランドがラグスポにおいて「ゴツさ」や「複雑さ」を競う中、ピアジェのポロはクッション型(丸みを帯びた四角)のケース・イン・ケースという独特のデザインコードを守り続けています。
青文字盤のギョシェ彫りは光の加減で表情を変えますが、決してギラつきません。
ライアンのように、完璧なタキシードにこの「鉄のポロ」を合わせる。これこそが、「決めすぎない」という現代のラグジュアリーです。
あえてSS(ステンレス)のポロを選ぶところにセンスを感じずにはいられません。
マイケル・B・ジョーダンとポロ スケルトンの構造美
一方、マイケル・B・ジョーダンが着用するのはポロ スケルトンです。マニアとして言わせてもらうと、この時計はムーブメント(Cal.1200S1)こそが主役です。
通常、自動巻き時計には巨大なローター(回転錘)があり、ムーブメントの半分を隠してしまいます。しかし、ピアジェは、マイクロローターという極小のローターをムーブメントの中に埋め込む特許技術を持っています。
これにより、表からも裏からも、精緻に面取りされたギアの動きが完全に見えるのです。
彼はこれをカジュアルなレザージャケットに合わせています。
「中身を見てくれ」と言わんばかりの、強烈な自信。メカ好きの男性なら、酒の肴にこのムーブメントだけで一晩語れるはずです。
【男の美学】冷徹な知性と圧倒的なスター性

ピアジェを選ぶ男には共通点があります。それは、「群れない」ことです。流行のラグスポ戦争(ノーチラスやロイヤルオークの奪い合い)を冷ややかな目で見つめ、自身のスタイルを貫いています。
綾野剛 in ハゲタカ with アルティプラノ
ドラマ『ハゲタカ(2018)』で、綾野剛演じる鷲津政彦が着用していたのがピアジェ アルティプラノです。
外資系ファンドマネージャーである鷲津にとって、時計は時間を知る道具である以上に、「相手を威圧せず、かつ自分の格を見せつける武器」である必要があります。
デカ厚のダイバーズウォッチはスーツの袖口を破壊し、野暮な印象を与えます。一方で、厚さ数ミリのアルティプラノは、完璧に仕立てられたシャツの袖口(カフ)に音もなく収まります。
彼が着けていたのはおそらく38mmの2針手巻きモデル(Ref.G0A31114等)と思われます。
秒針すらない「2針」を選ぶことは「分単位・秒単位でセコセコ働かない」という余裕の表れと言えるでしょう。同時に「俺の時間は俺が支配する」という強烈な意思表示です。
志尊淳 with ポロ スケルトン
現代のファッションアイコン、志尊淳さん。彼が雑誌やイベントで纏うのは、ダイヤモンドがセッティングされたモデルや中身が丸見えのポロ スケルトンです。
彼のスタイルは、時計を男のギアとしてではなく、ジュエリーの延長として捉えています。
ピアジェの真骨頂はここにあります。他の時計ブランドが後付けでダイヤを載せるのに対し、ピアジェは最初からジュエリーとして時計を設計します。だからこそ、ダイヤの輝きが時計を邪魔せず、一体化しているのです。
ポロ スケルトンに搭載されたCal.1200S1を見てください。ムーブメント自体にブルーやグレーの着色が施され、マイクロローターが駆動する様は、もはや小宇宙です。
これをサラリと着けこなす20代・30代が現れたことは、日本のメンズファッションの成熟を意味しています。
2PM ジュノとアルティプラノの静寂
K-POPスター、ジュノ(Lee Jun-ho)の腕元を飾るアルティプラノ。彼が選ぶのは、しばしばピンクゴールドやホワイトゴールドの秒針すらない2針モデルです。
秒針がないということは、「あくせく時間を気にしない」という余裕の現れ。
ステージ上であれほど激しいパフォーマンスをする彼が、プライベートや公の場では、時が止まったかのような静寂な時計を選ぶ。このギャップ(二面性)こそが大人の色気です。
「機能」ではなく「情緒」で時計を選ぶ。ここまで到達できれば、あなたはもう立派な時計上級者です。
一流の女性は手首にピアジェという知性をまとう

柴咲コウさん、北川景子さん、吉高由里子さんといったトップ女優たちが、ドラマの重要なシーンでなぜピアジェを着用するのか。それを理解していれば、パートナーへのギフト選びや、会食時の会話で「こいつ、分かってるな」と一目置かれることになります。
柴咲コウさん in ドラマ『インビジブル』
柴咲コウさんがドラマ『インビジブル』で演じたような「ミステリアスで芯のある自立した女性」には、しばしばポセションが選ばれます。特徴は回転するリングです。
ベゼル部分がクルクルと回るギミックは、「運命を自分で回す」というメタファーになっています。
北川景子さん in ドラマ『リコカツ』
編集者や弁護士など、凛とした知的な役柄が多い北川景子さん。手元にはアルティプラノやライムライト ガラが輝きます。
「ライムライト ガラ」の流線型のラグ(ケースの足)は、官能的でありながら極めて知性的。これを着けている女性は、単なるブランド好きではなく、アートへの造詣が深い証拠です。
吉高由里子さん in ドラマ『最愛』
吉高由里子さんが実業家役で見せる、シンプルながら存在感のあるジュエリーウォッチ使い。ピアジェの時計は、カルティエやヴァンクリーフほど「甘く」なく、ブルガリほど「強く」ない。
この絶妙な中庸と品格を選ぶセンスこそが、彼女たちの役柄にリアリティを与えています。
ピアジェ購入前に知っておくべき、マニアな現実的アドバイス

さて、気持ちは高まりましたか?しかし、実際にカードを切る前に、マニアとして現実的な疑問にも答えておきましょう。
薄型時計はヤワ?
「あんなに薄くて、すぐに壊れないの?」
これはよくある誤解です。確かに、G-SHOCKのように壁に投げつけるわけにはいきません。しかし、現代の「ポロ」シリーズは、10気圧(100m)防水を確保しています。
これは、日常生活はもちろん、プールで泳ぐ程度なら全く問題ないスペックです。
アルティプラノのようなドレスラインは非防水や生活防水が多いですが、そもそもドレスウォッチを着けて海に飛び込むような野暮な真似はしませんよね?
現代のピアジェは、CNC工作機械の進化により、薄くてもパーツの剛性は飛躍的に上がっています。安心して日常使いしてください。
ストラップで遊ぶインターチェンジャブルの魔力
最近の「ポロ」シリーズの多くは、インターチェンジャブル(ワンタッチ交換)システムを採用しています。
これが極めて優秀です。
平日は知的な「ネイビーのアリゲーターレザー」で役員会議に出席し、週末は「ラバーベルト」にパチっと付け替えて愛車でドライブへ。工具は一切不要。爪先ひとつで、時計の表情を180度変えることができます。
一本で二度美味しい。この合理性は、効率を愛するIT・金融エリートの性分に合うはずです。
オーバーホールとメンテナンスの覚悟
ピアジェは「マニュファクチュール」です。つまり、街の時計修理屋さんでは直せない場合が多く、基本的には正規のコンプリートサービスに出すことになります。
費用は3針モデルで7万〜10万円程度見ておく必要があります。
「高い」と思いますか?しかし、考えてみてください。
数年に一度、スイスの職人があなたの時計を分解し、洗浄し、油を注し直して、新品同様の輝きを取り戻してくれるのです。そのコストを惜しむくらいなら、最初からスマートウォッチにしておいた方が賢明です。
維持費を払うことすらも、文化遺産を預かるオーナーの務めとして楽しめる。そういう方にこそ、ピアジェを持っていただきたいのです。
まとめ
ロレックスやパテック・フィリップが「王道」だとすれば、ピアジェは「覇道」を行くブランドです。
あなたが今、求めているのが「他人から羨ましがられる時計」なら、デイトナを買ってください。
しかし、求めているのが「自分の人生を彩り、ふとした瞬間に自分の美学を確認できるパートナー」なら、ピアジェのブティックへ向かってください。
腕に乗せた瞬間、そのあまりの軽さと、工芸品としての重みのギャップに、きっとあなたは笑ってしまうはずです。「これだ、俺が探していたのは」と。
