クロムハーツ誕生から拡大へ ─ 1980〜1990年代、その輝きの始まり
今や世界中のセレブリティや時計愛好家から支持されるラグジュアリーブランド「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」。その歴史は1980年代後半、ロサンゼルスの小さな工房から始まりました。
■ 1988年、ロサンゼルスで誕生 ― バイクとレザーが生んだブランド
クロムハーツは1988年、リチャード・スターク(Richard Stark)、レナード・カムホウト(Leonard Kamhout)、ジョン・ボウマン(John Bowman)の3人によって設立されました。
当初はバイカー向けのレザーウェア製作を行う小さな工房としてスタートし、バイク映画の衣装制作などを手がけたのが原点です。特に映画『CHROME HEARTS(1989年未公開作品)』のための衣装制作が、ブランド名の由来にもなっています。
リチャード自身が熱狂的なバイカーで、既製品に満足できず“自分たちのための服”を作ったことがきっかけでした。
■ 1989年、銀職人との融合が生んだ革新
1989年頃、カムホウトが銀細工の技術を活かしてレザーとシルバーを融合させたデザインを提案。
これが、後に「クロス」「ダガー」「フローラル」など、今日まで続くクロムハーツの象徴的モチーフを生み出します。
ここから、クロムハーツは単なるバイカーウェアブランドから、“アートとしてのファッション”へと進化を始めました。
■ 1992年、CFDA受賞でファッション界の頂点へ
1992年、クロムハーツは**アメリカ・ファッションデザイナー協議会(CFDA)**による「Best Accessory Designer of the Year(最優秀アクセサリーデザイナー賞)」を受賞。ファッション業界において極めて名誉ある賞であり、当時はまだ無名に近かったブランドが一躍脚光を浴びるきっかけとなりました。
このとき、他の候補にはマーク・ジェイコブスらが名を連ねており、クロムハーツは一躍世界的な注目を浴びました。
CFDAはそれまで主にハイファッションブランドが受賞しており、バイカーカルチャー発のクロムハーツが選ばれたのは異例のことでした。
アンダーグラウンドなカルチャーを反映した重厚なデザインと、手仕事による本格的なクラフツマンシップが、既存のジュエリーブランドにはない圧倒的な個性として評価された瞬間でした。
■ 1990年代、ミュージシャンとハリウッドが魅了される
CFDA受賞後、クロムハーツはミュージシャンやハリウッドスターの間で急速に人気を拡大。
特にアクセル・ローズ(ガンズ・アンド・ローゼズ)、スティーヴン・タイラー(エアロスミス)、リヴ・タイラーなどが愛用していたことで知られています。
彼らがステージやメディアで身に着けたことで、”ただのファッション”ではない、本物のステートメントジュエリー”として、クロムハーツの名が広がっていきました。
ステージ衣装や私服での露出が相次ぎ、「反骨の象徴」としてクロムハーツがカルチャーの中心に躍り出ました。
■ 1996年、ニューヨークに初の旗艦店オープン
人気が高まる中、1996年にはついにニューヨークに初のフラッグシップストアをオープン。この店舗は単なるショップではなく、ブランドの世界観を五感で体感できる空間として、クロムハーツの価値をさらに高めました。
この頃から、単なるシルバージュエリーではなく、ラグジュアリーライフスタイルブランドとしての道を歩み始めます。
■1999年、日本・青山に「クロムハーツ東京」誕生
1999年、東京・青山に日本初の直営店がオープン。
当時の日本は裏原ブームの真っ只中で、木村拓哉氏やHYDE氏などの著名人が愛用したことにより、若者の間でも圧倒的な人気を博しました。
日本市場での成功は、クロムハーツのグローバル展開を加速させる大きな転機となりました。
そして1999年、クロムハーツはついに東京・青山に日本初の直営店をオープンします。
当時の日本は裏原宿系ファッションの全盛期。ストリートとラグジュアリーが交差する中で、クロムハーツのハードな美学とクラフト感が圧倒的な支持を集め、瞬く間にカリスマ的存在となります。
特に木村拓哉氏やHYDE氏など、影響力の強い著名人の愛用により、一般層にもブランドの認知が一気に広まりました。
■ラグジュアリーの原点は“クラフトマンシップ”
1980〜1990年代のクロムハーツは、「バイク」「反骨精神」「職人技術」「セレブ文化」が交差するなかで、本物を追求する者たちによって育てられたブランドでした。
今日のようにラグジュアリーマーケットで確固たる地位を築くまでには、流行ではなく、確かな技術と哲学に裏打ちされた信頼があったのです。
クロムハーツの成長を支えたのは、トレンドではなく「信念あるクラフトマンシップ」。
バイカー文化と職人技、そして反骨の精神を融合したその姿勢こそが、今日のラグジュアリーの象徴へとつながっています。
次回は、2000年代以降の進化と、現代におけるクロムハーツの新たな挑戦をご紹介していきます。
クロムハーツの進化と挑戦 ― 2000〜2010年代、ラグジュアリーを超えていく
1980〜90年代にかけて、バイカースピリットと職人技を融合させた唯一無二のジュエリーブランドとして世界的に注目を集めたクロムハーツ(CHROME HEARTS)。その後の2000年代以降、ブランドは単なるシルバーアクセサリーの枠を超え、ラグジュアリーライフスタイルブランドとしてさらなる飛躍を遂げていきます。
今回は、クロムハーツが「本物」を追求し続けながら、どのようにその世界観を拡張していったのかを詳しくご紹介します。
■ 2000年代初頭:ファッションとの邂逅 ─ Rick Owensとの出会い
2000年代に入り、クロムハーツはジュエリー単体ではなく、ファッション全体との親和性を高める方向へと舵を切ります。象徴的な出来事のひとつが、Rick Owens(リック・オウエンス)とのコラボレーションです。
リック・オウエンスは、前衛的でアンダーグラウンドな雰囲気を持つデザイナーとして知られており、彼とのタッグはまさに「美意識の融合」。
この協業により、クロムハーツのプロダクトは“着るアート”としての価値をさらに高めました。
同時に、世界のファッションエディターやバイヤーの間で、「ジュエリーブランドからの進化」が本格的に注目され始めます
■ 2003年:ローリー・リン・スタークの参画で生まれた“女性的感性”
2003年、創業者リチャード・スタークの妻である**ローリー・リン・スターク(Laurie Lynn Stark)**がブランド経営に本格的に参加。彼女の感性が加わることで、クロムハーツは次なるフェーズへと進化します。
それまで男性的・無骨なイメージが強かったラインナップに、女性向けの繊細なジュエリーやカラーアイテムが登場。また、アクセサリーだけでなく、ホームコレクションやキッズライン、インテリアプロダクトも積極的に開発されるようになります。
ローリーの参加によって、クロムハーツはより広い層に受け入れられる“総合ライフスタイルブランド”へと変貌していきました。
■ 2004年以降:家具・カトラリー・アイウェア… 生活すべてが“CHROME HEARTS”に
2004年以降、クロムハーツは家具、カトラリー、アイウェア、レザーグッズなど、日常を彩るあらゆるアイテムを手がけるようになります。
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家具: シルバーや高級レザーをあしらったチェアやテーブル
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カトラリー: 重厚なシルバースプーンやフォーク
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アイウェア: ダイヤモンドや金属パーツを用いたサングラス
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ホームグッズ: キャンドルホルダー、ボルト付きグラス、アッシュトレイなど
これらはどれも、単なる実用品ではなく“アートピース”として完成された存在感を放っており、空間全体にクロムハーツの世界観を投影できる特別なプロダクト群です。
■ 2008年:創業20周年を迎えるクロムハーツの風格
2008年、クロムハーツは創業から20周年を迎えます。
これを記念し、世界各国の店舗で記念ジュエリーや限定アイテムをリリース。特別仕様のリングやペンダントには、20周年記念の刻印が施され、現在でもコレクターの間で高値で取引される人気アイテムとなっています。
クロムハーツが単なる流行のブランドではなく、長く愛される本質的な価値を持つブランドであることを証明した年でもありました。
■ 2012年:銀座・並木通りにフラッグシップストアをオープン
2012年、東京・銀座の並木通りにラグジュアリー路線を強く打ち出した大型店舗がオープン。
この店舗は単なるショップではなく、ジュエリー・家具・アパレル・アイウェア・キッズラインまでを一堂に取り扱う総合空間。
特に国内外の富裕層を意識した接客や内装設計は、「クロムハーツ=ラグジュアリーの象徴」としての地位を確固たるものにしました。
■ 2014年:ローリング・ストーンズとのコラボなど、音楽との再接続
2014年には、伝説のロックバンドローリング・ストーンズとのコラボレーションを発表。ロックカルチャーにルーツを持つクロムハーツにとって、これは“原点回帰”でありながらも、ブランドが時代のアイコンと共鳴し続ける力を示すものでした。
この頃から、アートや音楽フェスなどのイベントにも積極的に関与。クロムハーツは“文化を支援するブランド”という新たな役割も担い始めます。
■ 2017年:「クロムハーツ・カフェ」やコンセプトショップの誕生
2017年には、東京やロサンゼルスにおいて**「CHROME HEARTS CAFE」やギャラリースペース併設のコンセプトショップ**が登場。
ここではジュエリーの展示販売だけでなく、ブランドが考える「美しい時間・空間・体験」の提供を目的とした特別な空間演出が行われています。
「ジュエリーを売る場所」から、「ブランド哲学を体感できる場所」へ──
クロムハーツは、また一歩進んだ“ラグジュアリーの本質”を体現しようとしていたのです。
■ クラフトを超えて「文化」となるクロムハーツ
2000年代以降のクロムハーツは、ただのラグジュアリーブランドではなく、ライフスタイル、空間、文化そのものを創り出す存在へと進化してきました。
「身につける」という行為を超え、“クロムハーツと共に生きる”という新しい豊かさを提案するブランド
それが、今のクロムハーツです。
次回は、2020年代以降の新たな展開と、未来へ向けたクロムハーツの挑戦についてご紹介します。
以下は、クロムハーツの2020年代の展開を、各年ごとのエピソードを交えて詳述したブログ形式の記事です。ブランドの価値が「物」から「文化」「投資価値」「世代共感」へと移り変わっていく様子を丁寧に描いています。
クロムハーツ、次なる時代へ ― 2020年代の革新と共鳴
コアなファンに支えられながら30年以上にわたり進化し続けるクロムハーツ(CHROME HEARTS)。2020年代に入ってからもその勢いは衰えることなく、むしろさらに広く、深く、時代の空気と共鳴しながら進化を遂げています。
ここでは、パンデミックという未曾有の事態を乗り越えながらも、アートとの融合、若年層の取り込み、そしてブランドとしての深化へと至る近年の軌跡を、年ごとに振り返っていきます。
■ 2021年:コロナ禍でも衰えぬ存在感 ― リユース市場での価格高騰
世界中がコロナ禍に見舞われた2021年、多くのブランドが売上減や店舗閉鎖に追い込まれるなか、クロムハーツは例外的な状況を迎えます。
それは、中古市場での価格高騰です。
特に、人気のクロスボールブレスレットやベビーファット クロスなどは、発売当時の定価を大きく上回る価格で取引され、**「売っても値下がりしないアクセサリー」**として注目され始めました。
これは単なるジュエリーとしての人気だけでなく、クロムハーツが資産性・希少性を伴うブランドとして確立されつつあることを意味しています。
◆ 実話エピソード
ある都内の高級リユース店では、1点もののフルダイヤモデルが即日売約。店員によると「クロムハーツはシャネルやエルメスと並ぶ“即決ブランド”になっている」とのこと。ラグジュアリー市場のなかでも、確固たる信頼があるからこそ成立する現象でした。
■ 2022年:アートとの融合 ― ギャラリーへ進出した“ジュエリー”
2022年、クロムハーツはジュエリーブランドという枠をさらに超え、現代アートとの本格的な融合をスタートします。
アメリカ本国やヨーロッパ、日本においても、現代美術ギャラリーとのコラボレーション展示を開催。展示作品はジュエリーではなく、彫刻や家具、インスタレーション作品などを含み、まさに「作品としてのクロムハーツ」を打ち出しました。
代表的な取り組みのひとつが、ロサンゼルスのギャラリーで行われた**“The Art of Chaos”展**。重厚なシルバーオブジェや、大理石と銀を組み合わせたベンチ、革張りの祭壇などが展示され、美術界からも高い評価を受けました。
◆ 裏話
この展示の裏には、創業者リチャード・スタークと息子たちによる「クロムハーツを“文化遺産”として残す」という長年の構想があったと言われています。単なる“高級品”ではなく、時代の美意識そのものを残す試みだったのです。
■ 2023年:東京・伊勢丹メンズ館にて大型ポップアップ開催
2023年、東京・新宿の伊勢丹メンズ館にて、クロムハーツ史上最大級のポップアップイベントが開催されました。ブランドのコアコレクションに加え、カスタムアイテムや会場限定のアパレルラインも披露され、連日行列ができるほどの盛況ぶりでした。
このイベントは、単なる販売会ではなく、世界観を五感で感じる体験型空間として設計されており、ジュエリーの展示演出にも一切の妥協がない贅沢な構成でした。
◆ 会場エピソード
イベント初日には木村拓哉氏が極秘来場したという噂も。
一部の来場者にのみ招待状が届くVIPルームでの先行展示もあり、「特別な人のためのクロムハーツ」を体感できる稀有な機会となりました。
■ 2024年:Z世代・ミレニアル世代へ ― “継承されるラグジュアリー”へ
かつては30〜40代のロックファンやバイカー文化をルーツとする男性に支持されていたクロムハーツですが、2024年現在ではZ世代やミレニアル世代の若年層にも人気が急拡大しています。
SNSでは、ベビーファットクロスやCHプラスのミニマルなデザインが、モードやストリートファッションに映えるアイテムとして注目され、TikTokやInstagramでのタグ付き投稿数は前年比約2倍に。
さらに、親世代が愛用していたクロムハーツを“受け継ぐ”スタイルも見られ、今や「家族でクロムハーツを共有する」という文化まで育ちつつあります。
◆ 若者の声
「父が昔つけていたリングを譲ってもらって、今はそれに合うピアスを買いました」
「ただのブランドじゃなくて“生き方”に近いから憧れる」
──そんな声が、若いクロムハーツファンから聞こえるようになっています。
■ まとめ:進化し続ける“本物”という証明
2020年代のクロムハーツは、パンデミックや社会情勢の変化のなかでも一切ブレることなく、ラグジュアリーの本質を問い直し、文化と共鳴し続ける存在であり続けています。
中古市場での価値、アート界との接点、若年層との新たな共感──
それらはすべて、「本物であり続けることの強さ」が支えているのです。
次の時代、クロムハーツはどこへ向かうのか。
きっとその答えもまた、“クラフト”の中に宿るはずです。
